# この水産基本法の翻訳は、平成十七年七月二十九日法律第八十九号までの改正(平成17年12月22日施行)について、「法令用語日英標準対訳辞書」(平成18年3月版)に準拠して作成したものです。なお、この法令の翻訳は公定訳ではありません。法的効力を有するのは日本語の法令自体であり、翻訳はあくまでその理解を助けるための参考資料です。この翻訳の利用に伴って発生した問題について、一切の責任を負いかねますので、法律上の問題に関しては、官報に掲載された日本語の法令を参照してください。 水産基本法 (平成十三年六月二十九日法律第八十九号) 最終改正年月日:平成十七年七月二十九日法律第八十九号 目次  第一章 総則(第一条―第十条)  第二章 基本的施策   第一節 水産基本計画(第十一条)   第二節 水産物の安定供給の確保に関する施策(第十二条―第二十条)   第三節 水産業の健全な発展に関する施策(第二十一条―第三十二条)  第三章 行政機関及び団体(第三十三条・第三十四条)  第四章 水産政策審議会(第三十五条―第三十九条)  附則    第一章 総則 第一条(目的)  この法律は、水産に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、水産に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。 第二条(水産物の安定供給の確保) 1 水産物は、健全な食生活その他健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な水産物が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。 2 水産物の供給に当たっては、水産資源が生態系の構成要素であり、限りあるものであることにかんがみ、その持続的な利用を確保するため、海洋法に関する国際連合条約の的確な実施を旨として水産資源の適切な保存及び管理が行われるとともに、環境との調和に配慮しつつ、水産動植物の増殖及び養殖が推進されなければならない。 3 国民に対する水産物の安定的な供給については、世界の水産物の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、水産資源の持続的な利用を確保しつつ、我が国の漁業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入とを適切に組み合わせて行われなければならない。 第三条(水産業の健全な発展) 1 水産業については、国民に対して水産物を供給する使命を有するものであることにかんがみ、水産資源を持続的に利用しつつ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即した漁業生産並びに水産物の加工及び流通が行われるよう、効率的かつ安定的な漁業経営が育成され、漁業、水産加工業及び水産流通業の連携が確保され、並びに漁港、漁場その他の基盤が整備されることにより、その健全な発展が図られなければならない。 2 水産業の発展に当たっては、漁村が漁業者を含めた地域住民の生活の場として水産業の健全な発展の基盤たる役割を果たしていることにかんがみ、生活環境の整備その他の福祉の向上により、その振興が図られなければならない。 第四条(国の責務) 1 国は、前二条に定める水産に関する施策についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、水産に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 2 国は、水産に関する情報の提供等を通じて、基本理念に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。 第五条(地方公共団体の責務)  地方公共団体は、基本理念にのっとり、水産に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 第六条(水産業者の努力等) 1 水産業者及び水産業に関する団体は、水産業及びこれに関連する活動を行うに当たっては、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。 2 漁業者以外の者であって、水産動植物の採捕及びこれに関連する活動を行うものは、国及び地方公共団体が行う水産に関する施策の実施について協力するようにしなければならない。 第七条(水産業者等の努力の支援)  国及び地方公共団体は、水産に関する施策を講ずるに当たっては、水産業者及び水産業に関する団体がする自主的な努力を支援することを旨とするものとする。 第八条(消費者の役割)  消費者は、水産に関する理解を深め、水産物に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。 第九条(法制上の措置等)  政府は、水産に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。 第十条(年次報告等) 1 政府は、毎年、国会に、水産の動向及び政府が水産に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。 2 政府は、毎年、前項の報告に係る水産の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。 3 政府は、前項の講じようとする施策を明らかにした文書を作成するには、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。    第二章 基本的施策     第一節 水産基本計画 第十一条 1 政府は、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、水産基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。 2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 水産に関する施策についての基本的な方針  二 水産物の自給率の目標  三 水産に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策  四 前三号に掲げるもののほか、水産に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 3 前項第二号に掲げる水産物の自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、我が国の漁業生産及び水産物の消費に関する指針として、漁業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。 4 第二項第二号に掲げる水産物の自給率の目標については、食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)第十五条第二項第二号に掲げる食料自給率の目標との調和が保たれたものでなければならない。 5 基本計画のうち漁村に関する施策に係る部分については、国土の総合的な利用、整備及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。 6 政府は、第一項の規定により基本計画を定めようとするときは、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。 7 政府は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。 8 政府は、水産をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに水産に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、基本計画を変更するものとする。 9 第六項及び第七項の規定は、基本計画の変更について準用する。     第二節 水産物の安定供給の確保に関する施策 第十二条(食料である水産物の安定供給の確保)  食料である水産物の安定的な供給の確保に関する施策については、食料・農業・農村基本法及びこの節に定めるところによる。 第十三条(排他的経済水域等における水産資源の適切な保存及び管理) 1 国は、排他的経済水域等(我が国の排他的経済水域、領海及び内水並びに大陸棚(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第二条に規定する大陸棚をいう。)をいう。以下同じ。)における水産資源の適切な保存及び管理を図るため、最大持続生産量を実現することができる水準に水産資源を維持し又は回復させることを旨として、漁獲量及び漁獲努力量の管理その他必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、前項に規定する施策が漁業経営に著しい影響を及ぼす場合において必要があると認めるときは、これを緩和するために必要な施策を講ずるものとする。 第十四条(排他的経済水域等以外の水域における水産資源の適切な保存及び管理)  国は、我が国が世界の漁業生産及び水産物の消費において重要な地位を占めていることにかんがみ、排他的経済水域等以外の水域における水産資源の適切な保存及び管理が図られるよう、水産資源の持続的な利用に関する国際機関その他の国際的な枠組みへの協力、我が国の漁業の指導及び監督その他必要な施策を講ずるものとする。 第十五条(水産資源に関する調査及び研究)  国は、水産資源の適切な保存及び管理に資するため、水産資源に関する調査及び研究その他必要な施策を講ずるものとする。 第十六条(水産動植物の増殖及び養殖の推進)  国は、環境との調和に配慮した水産動植物の増殖及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の生産及び放流の推進、養殖漁場の改善の促進その他必要な施策を講ずるものとする。 第十七条(水産動植物の生育環境の保全及び改善)  国は、水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、水質の保全、水産動植物の繁殖地の保護及び整備、森林の保全及び整備その他必要な施策を講ずるものとする。 第十八条(排他的経済水域等以外の水域における漁場の維持及び開発)  国は、排他的経済水域等以外の水域における我が国の漁業に係る漁場の維持及び開発を図るため、操業に関する外国との協議、水産資源の探査その他必要な施策を講ずるものとする。 第十九条(水産物の輸出入に関する措置) 1 国は、水産物につき、我が国の水産業による生産では需要を満たすことができないものの輸入を確保するため必要な施策を講ずるとともに、水産物の輸入によって水産資源の適切な保存及び管理又は当該水産物と競争関係にある水産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、特に必要があるときは、輸入の制限、関税率の調整その他必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、水産物の輸出を促進するため、水産物の競争力を強化するとともに、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化その他必要な施策を講ずるものとする。 第二十条(国際協力の推進)  国は、世界の水産物の需給の将来にわたる安定に資するため、開発途上地域における水産業の振興に関する技術協力及び資金協力その他の国際協力の推進に努めるものとする。     第三節 水産業の健全な発展に関する施策 第二十一条(効率的かつ安定的な漁業経営の育成)  国は、効率的かつ安定的な漁業経営を育成するため、経営意欲のある漁業者が創意工夫を生かした漁業経営を展開できるようにすることが重要であることにかんがみ、漁業の種類及び地域の特性に応じ、経営管理の合理化に資する条件の整備、漁船その他の施設の整備の促進、事業の共同化の推進その他漁業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。 第二十二条(漁場の利用の合理化の促進)  国は、効率的かつ安定的な漁業経営の育成に資するため、漁場の利用の合理化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。 第二十三条(人材の育成及び確保) 1 国は、効率的かつ安定的な漁業経営を担うべき人材の育成及び確保を図るため、漁業者の漁業の技術及び経済管理能力の向上、新たに漁業に就業しようとする者に対する漁業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、漁ろうの安全の確保、労働条件の改善その他の漁業の従事者の労働環境の整備に必要な施策を講ずるものとする。 3 国は、国民が漁業に対する理解と関心を深めるよう、漁業に関する教育の振興その他必要な施策を講ずるものとする。 第二十四条(漁業災害による損失の補てん等) 1 国は、災害によって漁業の再生産が阻害されることを防止するとともに、漁業経営の安定を図るため、災害による損失の合理的な補てんその他必要な施策を講ずるものとする。 2 国は、漁業経営の安定に資するため、水産物の価格の著しい変動を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。 第二十五条(水産加工業及び水産流通業の健全な発展)  国は、水産加工業及び水産流通業の健全な発展を図るため、事業活動に伴う環境への負荷の低減及び資源の有効利用の確保に配慮しつつ、事業基盤の強化、漁業との連携の推進、水産物の流通の合理化その他必要な施策を講ずるものとする。 第二十六条(水産業の基盤の整備)  国は、水産業の生産性の向上を促進するとともに、水産動植物の増殖及び養殖の推進に資するため、地域の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ、事業の効率的な実施を旨として、漁港の整備、漁場の整備及び開発その他水産業の基盤の整備に必要な施策を講ずるものとする。 第二十七条(技術の開発及び普及)  国は、水産に関する技術の研究開発及び普及の効果的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、国、独立行政法人、都道府県及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、地域の特性に応じた水産に関する技術の普及事業の推進その他必要な施策を講ずるものとする。 第二十八条(女性の参画の促進)  国は、男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保することが重要であることにかんがみ、女性の水産業における役割を適正に評価するとともに、女性が自らの意思によって水産業及びこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環境整備を推進するものとする。 第二十九条(高齢者の活動の促進)  国は、水産業における高齢者の役割分担並びにその有する技術及び能力に応じて、生きがいを持って水産業に関する活動を行うことができる環境整備を推進し、水産業に従事する高齢者の福祉の向上を図るものとする。 第三十条(漁村の総合的な振興) 1 国は、水産業の振興その他漁村の総合的な振興に関する施策を計画的に推進するものとする。 2 国は、地域の水産業の健全な発展を図るとともに、景観が優れ、豊かで住みよい漁村とするため、地域の特性に応じた水産業の基盤の整備と防災、交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備その他の福祉の向上とを総合的に推進するよう、必要な施策を講ずるものとする。 第三十一条(都市と漁村の交流等)  国は、国民の水産業及び漁村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、都市と漁村との間の交流の促進、遊漁船業の適正化その他必要な施策を講ずるものとする。 第三十二条(多面的機能に関する施策の充実)  国は、水産業及び漁村が国民生活及び国民経済の安定に果たす役割に関する国民の理解と関心を深めるとともに、水産業及び漁村の有する水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるようにするため、必要な施策を講ずるものとする。    第三章 行政機関及び団体 第三十三条(行政組織の整備等)  国及び地方公共団体は、水産に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織の整備並びに行政運営の効率化及び透明性の向上に努めるものとする。 第三十四条(団体の再編整備)  国は、基本理念の実現に資することができるよう、水産に関する団体の効率的な再編整備につき必要な施策を講ずるものとする。    第四章 水産政策審議会 第三十五条(設置)  農林水産省に、水産政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。 第三十六条(権限) 1 審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林水産大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。 2 審議会は、前項に規定する事項に関し農林水産大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。 3 審議会は、前二項に規定するもののほか、漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)、漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)、漁船法(昭和二十五年法律第百七十八号)、水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)、海洋水産資源開発促進法(昭和四十六年法律第六十号)、沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)、漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(昭和五十一年法律第四十三号)、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(平成八年法律第七十七号)及び持続的養殖生産確保法(平成十一年法律第五十一号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。 第三十七条(組織) 1 審議会は、委員三十人以内で組織する。 2 委員は、前条第一項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、農林水産大臣が任命する。 3 委員は、非常勤とする。 4 第二項に定めるもののほか、審議会の職員で政令で定めるものは、農林水産大臣が任命する。 第三十八条(資料の提出等の要求)  審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。 第三十九条(委任規定)  この法律に定めるもののほか、審議会の組織、所掌事務及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。  附則 第一条(施行期日)  この法律は、公布の日から施行する。 第二条(沿岸漁業等振興法の廃止)  沿岸漁業等振興法(昭和三十八年法律第百六十五号)は、廃止する。 第三条(経過措置) 1 この法律の施行の際平成十三年における前条の規定による廃止前の沿岸漁業等振興法(以下「旧法」という。)第七条の報告書が国会に提出されていない場合には、同条の報告書の国会への提出については、なお従前の例による。 2 この法律の施行前に旧法第七条の規定により同条の報告書が国会に提出された場合又は前項の規定によりなお従前の例によるものとされた旧法第七条の規定により同条の報告書が国会に提出された場合には、これらの報告書は、第十条第一項の規定により同項の報告として国会に提出されたものとみなす。 3 この法律の施行の際平成十三年における旧法第七条の文書が国会に提出されていない場合には、同条の文書の国会への提出については、なお従前の例による。 4 この法律の施行前に旧法第七条の規定により同条の文書が国会に提出された場合又は前項の規定によりなお従前の例によるものとされた旧法第七条の規定により同条の文書が国会に提出された場合には、これらの文書は、第十条第二項の規定により同項の文書として国会に提出されたものとみなす。  附則(平成一三年六月二九日法律第九二号)(抄) 第一条(施行期日)  この法律は、平成十四年四月一日から施行する。  附則(平成一四年六月一九日法律第七三号)(抄) 第一条(施行期日)  この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (平成一四年政令第二二八号で平成一四年七月一日から施行)  附則(平成一五年七月一六日法律第一一九号)(抄) 第一条(施行期日)  この法律は、地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)の施行の日から施行する。(施行の日=平成一六年四月一日) 第六条(その他の経過措置の政令への委任)  この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。  附則(平成一七年七月二九日法律第八九号)(抄) 第一条(施行期日)  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。 (平成一七年政令第三七四号で平成一七年一二月二二日から施行)