#この高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成13年1月6日施行)の翻訳は、「法令用語日英標準対訳辞書(平成19年3月版)に準拠して作成したものです。なお、この法令の翻訳は公定訳ではありません。法的効力を有するのは日本語の法令自体であり、翻訳はあくまでその理解を助けるための参考資料です。この翻訳の利用に伴って発生した問題について、一切の責任を負いかねますので、法律上の問題に関しては、官報に掲載された日本語の法令を参照してください。 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法 (平成十二年法律第百四十四号) 目次 第一章 総則(第一条―第十五条) 第二章 施策の策定に係る基本方針(第十六条―第二十四条) 第三章 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第二十五条―第三十四条) 第四章 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画(第三十五条) 附則    第一章 総則 第一条 (目的)  この法律は、情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、並びに高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について定めることにより、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。 第二条 (定義)  この法律において「高度情報通信ネットワーク社会」とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会をいう。 第三条 (すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現)  高度情報通信ネットワーク社会の形成は、すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用の機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、行われなければならない。 第四条 (経済構造改革の推進及び産業国際競争力の強化)  高度情報通信ネットワーク社会の形成は、電子商取引その他の高度情報通信ネットワークを利用した経済活動(以下「電子商取引等」という。)の促進、中小企業者その他の事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって経済構造改革の推進及び産業の国際競争力の強化に寄与するものでなければならない。 第五条(ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現)  高度情報通信ネットワーク社会の形成は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じた、国民生活の全般にわたる質の高い情報の流通及び低廉な料金による多様なサービスの提供により、生活の利便性の向上、生活様式の多様化の促進及び消費者の主体的かつ合理的選択の機会の拡大が図られ、もってゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現に寄与するものでなければならない。 第六条 (活力ある地域社会の実現及び住民福祉の向上)  高度情報通信ネットワーク社会の形成は、情報通信技術の活用による、地域経済の活性化、地域における魅力ある就業の機会の創出並びに地域内及び地域間の多様な交流の機会の増大による住民生活の充実及び利便性の向上を通じて、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現及び地域住民の福祉の向上に寄与するものでなければならない。 第七条 (国及び地方公共団体と民間との役割分担)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、民間が主導的役割を担うことを原則とし、国及び地方公共団体は、公正な競争の促進、規制の見直し等高度情報通信ネットワーク社会の形成を阻害する要因の解消その他の民間の活力が十分に発揮されるための環境整備等を中心とした施策を行うものとする。 第八条(利用の機会等の格差の是正)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、地理的な制約、年齢、身体的な条件その他の要因に基づく情報通信技術の利用の機会又は活用のための能力における格差が、高度情報通信ネットワーク社会の円滑かつ一体的な形成を著しく阻害するおそれがあることにかんがみ、その是正が積極的に図られなければならない。 第九条 (社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、情報通信技術の活用により生ずる社会経済構造の変化に伴う雇用その他の分野における各般の新たな課題について、適確かつ積極的に対応しなければならない。 第十条 (国及び地方公共団体の責務)  国は、第三条から前条までに定める高度情報通信ネットワーク社会の形成についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。 第十一条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。 第十二条  国及び地方公共団体は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策が迅速かつ重点的に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。 第十三条 (法制上の措置等)  政府は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。 第十四条 (統計等の作成及び公表)  政府は、高度情報通信ネットワーク社会に関する統計その他の高度情報通信ネットワーク社会の形成に資する資料を作成し、インターネットの利用その他適切な方法により随時公表しなければならない。 第十五条 (国民の理解を深めるための措置)  政府は、広報活動等を通じて、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。    第二章 施策の策定に係る基本方針 第十六条 (高度情報通信ネットワークの一層の拡充等の一体的な推進)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークの一層の拡充、高度情報通信ネットワークを通じて提供される文字、音声、映像その他の情報の充実及び情報通信技術の活用のために必要な能力の習得が不可欠であり、かつ、相互に密接な関連を有することにかんがみ、これらが一体的に推進されなければならない。 第十七条 (世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、広く国民が低廉な料金で利用することができる世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を促進するため、事業者間の公正な競争の促進その他の必要な措置が講じられなければならない。 第十八条 (教育及び学習の振興並びに人材の育成)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、すべての国民が情報通信技術を活用することができるようにするための教育及び学習を振興するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展を担う専門的な知識又は技術を有する創造的な人材を育成するために必要な措置が講じられなければならない。 第十九条 (電子商取引等の促進)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、規制の見直し、新たな準則の整備、知的財産権の適正な保護及び利用、消費者の保護その他の電子商取引等の促進を図るために必要な措置が講じられなければならない。 第二十条 (行政の情報化)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、国及び地方公共団体の事務におけるインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用の拡大等行政の情報化を積極的に推進するために必要な措置が講じられなければならない。 第二十一条 (公共分野における情報通信技術の活用)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、国民の利便性の向上を図るため、情報通信技術の活用による公共分野におけるサービスの多様化及び質の向上のために必要な措置が講じられなければならない。 第二十二条 (高度情報通信ネットワークの安全性の確保等)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保、個人情報の保護その他国民が高度情報通信ネットワークを安心して利用することができるようにするために必要な措置が講じられなければならない。 第二十三条 (研究開発の推進)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、急速な技術の革新が、今後の高度情報通信ネットワーク社会の発展の基盤であるとともに、我が国産業の国際競争力の強化をもたらす源泉であることにかんがみ、情報通信技術について、国、地方公共団体、大学、事業者等の相互の密接な連携の下に、創造性のある研究開発が推進されるよう必要な措置が講じられなければならない。 第二十四条 (国際的な協調及び貢献)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークが世界的規模で展開していることにかんがみ、高度情報通信ネットワーク及びこれを利用した電子商取引その他の社会経済活動に関する、国際的な規格、準則等の整備に向けた取組、研究開発のための国際的な連携及び開発途上地域に対する技術協力その他の国際協力を積極的に行うために必要な措置が講じられなければならない。    第三章 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 第二十五条 (設置)  高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため、内閣に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「本部」という。)を置く。 第二十六条 (所掌事務)  本部は、次に掲げる事務をつかさどる。  一 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画(以下「重点計画」という。)を作成し、及びその実施を推進すること。  二 前号に掲げるもののほか、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策で重要なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。 第二十七条 (組織)  本部は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長及び高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員をもって組織する。 第二十八条 (高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長) 1 本部の長は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。 2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。 第二十九条 (高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長) 1 本部に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。 2 副本部長は、本部長の職務を助ける。 第三十条 (高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員) 1 本部に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員(以下「本部員」という。)を置く。 2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。  一 本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣  二 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者 第三十一条 (資料の提出その他の協力) 1 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体及び独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。 2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。 第三十二条 (事務)  本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。 第三十三条 (主任の大臣)  本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。 第三十四条 (政令への委任)  この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。    第四章 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画 第三十五条 1 本部は、この章の定めるところにより、重点計画を作成しなければならない。 2 重点計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  一 高度情報通信ネットワーク社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策に関する基本的な方針  二 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策  三 教育及び学習の振興並びに人材の育成に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策  四 電子商取引等の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策  五 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に関しが迅速かつ重点的に講ずべき施策  六 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策  七 前各号に定めるもののほか、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を政府が迅速かつ重点的に推進するために必要な事項 3 重点計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。 4 本部は、第一項の規定により重点計画を作成したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 5 本部は、適時に、第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。 6 第四項の規定は、重点計画の変更について準用する。    附 則 (施行期日) 1 この法律は、平成十三年一月六日から施行する。 (検討) 2 政府は、この法律の施行後三年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。